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北軽井沢・嬬恋村「とうもろこし収穫体験」レポート

 

久保田 武蔵

 

 

2008821日(木)、北軽井沢へ合宿に来た東京の子供達が、嬬恋村にて「とうもろこし収穫」を体験した。

 

今回協力してくださったのは、嬬恋村の農家である横沢氏。とうもろこしの他にキャベツやブルーベリーなどの作物も栽培しており、一般人の農業体験にも積極的に協力し、その場所を提供している人物である。

 

今回収穫体験をしたのは、東京都の中でもオフィス街として知られる品川区の子供達。自然に囲まれた環境の中でどのような反応を示すのか、私自身も非常に楽しみだった。朝6時に起床して1時間みっちりと体操をし、朝昼食の他に手伝いや後片付け、更には夏休みの宿題を午前中いっぱい行った子供達はとても疲れているようだった。しかし、生まれて初めての農業体験への期待からかは分からないが、とにかく全員が寝ることなく横沢氏との集合場所に移動した。

 

数分後、集合場所に横沢氏がやってきた。とても優しそうな笑顔が印象的な方だ。私が運転する車に今回の企画者である()ビッグマウス代表の尾高氏、そして子供達6名が乗り込み、横沢さんの運転する軽トラックを追いかけた。山々に囲まれた畑道を進み、幾度となく車の両端を青々と茂った作物の葉に擦りそうになりながら、5分ほどで目的地に辿り着いた。車が止まった場所は言葉にならないほどの絶景だった。晴れ渡る空、青々とした雄大な山、どこまでも続いていそうなトウモロコシ畑やキャベツ畑に囲まれた9人。この大自然の中では、我々人間は本当に小さな存在である。しかし、そのちっぽけな人間が作り上げた広大な畑は、北軽井沢の空や山と共にハーモニーを奏で、ひとつの素晴らしい芸術作品となっていた。

「すごい!」

その風景を見て、子供達が叫んだ。これが飾りのない、嘘のない表現方法だろう。私の口からも、尾高氏の口からも、この言葉しか出てこなかった。

 

畑に立った横沢氏が準備に入った。そして、あっという間に百戦錬磨の慣れた手つきでトウモロコシを1本収穫。トウモロコシの品種は「味来(みらい)」というもので、収穫したものは生でも食べることができるのだとか。早速、もぎたての一番新鮮なところをひとくちいただいてみた。とてつもなく甘い!茹でトウモロコシ以外はそのままのトウモロコシを食したことのない私にとって、生のまま食べられるという事実だけで驚かされたが、いままで体験したことのないジューシーな味わいと、砂糖をかけたのではないかと疑ってしまうほどの甘みに、頭を金槌で叩かれたかのような衝撃を受けた。私は思った。これは野菜ではない。果物だと。これからこれを子供達が収穫し、自分で食べることになる。どんな表情をするのだろうか?私も、もちろん尾高氏も自然と表情が緩んだ。

 

横沢氏の手助けとともに、子供達がトウモロコシを収穫し始めた。まずをしっかりと実を掴み、決して力を入れすぎないようにしながらゆっくりと収穫する。雑に収穫すると、来年トウモロコシができなくなってしまうのだという。順番にゆっくりと丁寧に収穫をさせていただき、それを頬張ってみる子供達。

「おいしい!」

「甘い!」

これらの言葉のみを発し、全員が一心不乱にトウモロコシを食べ始めた。彼らは都会に住んでおり、スーパーに並んでいるトウモロコシや調理された状態での姿しか知らない。また、「おいしい」や「甘い」という言葉とともに喜ぶのはオヤツを食べたときくらいだったはずである。そんな子供達が自分の手でトウモロコシを収穫し、溢れんばかりの満面の笑顔とともに当たり前のようにその作物と向かい合っている。なんだか狐につままれたような不思議な空間であった。

 

 子供達は、食べ終えた後のトウモロコシをどうするべきか横沢氏に尋ねた。すると、

「その辺に捨てちゃっていいよ。」

と横沢氏。子供達は不思議そうな、複雑そうな顔をして捨てることを躊躇っていたが、すかさず同氏からフォローが入る。

「遠慮せずにその辺に捨てていいよ。これが肥料になって、他のトウモロコシをもっと育てるんだ。ここに無駄なものは何ひとつないんだよ。」

例え一般的にゴミと扱われるものであっても、必要なものは全て利用する。この部分に関しては、最近話題になっている「エコ」に通ずる部分があるように感じた。体験を絡ませながら自然と子供達にメッセージを伝えることのできる横沢氏は、このような場所を提供してくださる農家の方というだけではなく、私達にとっては優秀な教師でもあった。

 

 収穫体験を終えて横沢氏と話をしていて意気投合し、ご自宅へうかがわせていただくことになった。そこでは地元で捕獲されたカブトムシが飼育されており、なんとそのカブトムシを子供達にプレゼントしてくださったのだ。子供はカブトムシが大好きだということをよくご存知で、子供の心の掴み方もよく心得ている。やはり最高の教師である。また、ぜひ食べてほしいということで横沢氏の奥様が自宅の倉庫から持ってきてくれた袋には、ナスやピーマンがぎっしり。そのナスやピーマンは有機野菜ということで農薬を使っていないため、まるでブーメランのように大きく湾曲しているのである。話こそ聞いたことがあったものの、私はこのような野菜を目にするのが初めてだったため、尾高氏と共に興奮して写真をたくさん撮ってしまった。そんな状況を知らず、いただいたカブトムシに集中して何も見えなくなる子供達。都会のどこの遊園地で見るよりも生き生きした子供の顔がそこにはあった。

 

ぜひ果物も食べてみてほしいということで、予定にはなかったブルーベリーの試食体験へ連れて行っていただいた。場所は横沢氏所有のブルーベリー畑。摘んだ実をそのまま口の中へ放り込むと、ツーンと脳天に刺激を与える甘酸っぱい味が口いっぱいに広がる。周りの風景が、より一層このブルーベリーの味を引き立てる。トウモロコシの収穫体験で喉がカラカラに渇いた子供達は、ハムスターがヒマワリの種を頬袋に溜め込むように口を膨らませながら横沢さん自慢のブルーベリーを食べていた。最後のほうになると甘い実の色を理解し、それを私に勧めてくれたほどだ。子供の洞察力は想像以上に凄いものだと改めて感じることとなった。

 

思いがけない貴重な体験を目一杯させていただいた後、最後に感謝を込めた「ありがとうございました!」という言葉と共に横沢氏とお別れした。優しい笑顔で私達を見送ってくださった横沢氏と奥様。お二人の笑顔もまた、他のどの作物にも負けるとも劣らない北軽井沢の特産品であった。今後も、様々な形で「いい環境」と「いい人」のコラボレーションを体験したいものである。泥だらけになった車内を見ては思い出す。笑顔でいっぱいの子供達。トウモロコシの味。あの風景。そして、横沢夫妻の笑顔を。

 

ちなみに、収穫したトウモロコシが当日の晩御飯のメニューとなったことはいうまでもない。これまでトウモロコシが苦手であった子も、自分で収穫をして調理もしたトウモロコシをごく自然に食べていた。このプログラムは、子供達の「食育」にも役立ったようである。

横沢氏の「味来」、そして子供達の「未来」に乾杯。