ひろみちお兄さんとの共演
久保田 武蔵
役者が違う。
こう言われても文句が言えない。「ひろみちお兄さん」と「ジャングル・グルル」。格が違う。知名度が違う。実績が違う。私にとって、雲の上の存在のようなものである。格闘技で例えると、前座選手とチャンピオン。これくらい差があるといっても過言ではない。
「ひろみちお兄さん」こと佐藤弘道氏は、NHKで長きに渡って体操のお兄さんを担当され、全国区での人気を持つお兄さんだ。NHK卒業後はバラエティ番組やコマーシャルなどにも進出。飛ぶ鳥を落とす勢いで活動されている。
そんな彼と、フィットネスクラブ「ティップネス」の体育の日イベントで、同じステージに立たせていただくことになった。内容は「親子で楽しむ体操」。場所は新たな格闘技のメッカ、東京武道館である。ステージ数は全4回。私達は各2回ずつ、ステージを担当させていただくことになった。1、3ステージがひろみちお兄さん。2、4ステージが私。
まずはひろみちお兄さんから。進行も実演もやはり超1流。そして、お客様の反応が凄くいい。会場に来ていた子供達のお母さんが、正真正銘のひろみちお兄さんファンだった。子供よりもお母さんが盛り上がっていたため、テンションの上がりきったお母さんたちはうまく子供を誘導する。そしておたがいが自分のパフォーマンスを進行しやすくするポイントは、いかにお客様を自分のペースに引き込むかだ。ファンは、彼が何を言っても嬉しい。何をしても楽しい。イベントが始まった瞬間から、その場は彼にとって「アウェイ」ではなく「ホーム」なのだ。彼のこれまでの経験が、すべて活きているのである。
私はお客様にひろみちお兄さんの「オマケ」と見られていたかもしれない。チャンピオンの試合を見るために会場に来たが、早く到着してしまったから前座の試合も見てやろう。このように思われていたかもしれない。しかし、前座選手でも試合内容によってはお客様を沸かせることができる。豪快なKOを見せれば、お客様も納得してくれる。そう考え、自らを奮い立たせた。まずは会場を自分のペースに引き込まなければならない。そのため、私は「笑い」から活路を見出した。
このようなイベントで2人が同じようなことをやってしまったら、イベント自体が全く意味のないものになってしまう。親子体操の場合、やりかたは2つある。親を引き込むか、子供を引き込むか。このどちらかである。私は後者を選択した。ひろみちお兄さんは親から。ここで2人の色がはっきりと分かれた。だからこそ、イベントが成り立ったのである。
親と子供。「親子体操」の場合、片方が面白いと感じれば、もう片方も楽しくなってくる。インストラクターたる者、自らを見極め、どちらからアプローチしていくかを決めていくべきである。そこから自分の色を出せるようになり、完全オリジナルの空間を作り出すことができるのだ。空間づくりの職人。これこそがインストラクターの本来の仕事なのかもしれないと、このイベントから改めて考えさせられた。